日の射し込んでいる郵便局は絶えず扉が鳴り、人びとは朝の新鮮な空気を撒（ま）き散らしていた。

（店内は）客ではち切れんばかり

注文が殺到し、金が洪水のようにはいって来る

八時をすぎると、広々と感じたレストランは満員となり、なごやかな、明るい雰囲気になった。お店にしても劇場にしても、お客が雰囲気を作るのだなと思った。

カフェ・テラスのテーブルが客で鈴なり

髪を切ってさっぱりなんて言うと、穢れを祓ったようで聞こえはいいけれど、本当はただの自傷行為だ。過去のしみついた自分をざっくり切り落として、新しい自分に生まれ変わりたいと強く願っている。つまりいままでの自分を全否定している訳で、髪を切るというのは日常的な行為に思えても、実は非常に大きな自己否定でもある。変わりたいと強く願いそれを実行するのは、いままでの自分を殺してしまいたいという願望のあらわれ。

（銭湯の）番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。

建物とも呼べない小屋のような建物が見えた。 　まさに路上でよく見かけるクレープ屋の屋台、もしくは宝くじ売場とみまがうほどの小ささである。《…略…》遊園地の片隅に建っていたら似合うかもしれなかった。

ほどなく、開演時間となった。照明が落とされて、舞台が明るくなった。咳払いの残りが、静まりゆく会場に、最後に一つ二つ響いて止んだ。

入ってきた電車の騒音に負けまいと声を大きくする。