(恋人に別れを告げられて泣く)「わたしだって半狂乱なのよ。わかってる?」 そう言った途端、こみあげてくるものがあった。野呂の前で涙を見せた途端、自分自身の感情の収拾がつかなくなるのはわかりきっていた。わたしは奥歯を強く嚙んで涙をこらえた。 口の中いっぱいに拡がる漆黒の闇を嚙みしめているような気がした。今後、耐えていかねばならない野呂の不在は、わたしにとって、無限の闇、無限の空洞だった。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:60% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
泣きそう・泣くのを我慢
失恋・恋人と別れる
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前後の文章を含んだ引用
......改まったようにわたしを見た。「そんなことはマヤに心配してもらうことではないよ。そうだろう?」 そうね、とわたしは言った。そして、その後ですぐ、「でも」と言った。「わたしだって半狂乱なのよ。わかってる?」 そう言った途端、こみあげてくるものがあった。野呂の前で涙を見せた途端、自分自身の感情の収拾がつかなくなるのはわかりきっていた。わたしは奥歯を強く嚙んで涙をこらえた。 口の中いっぱいに拡がる漆黒の闇を嚙みしめているような気がした。今後、耐えていかねばならない野呂の不在は、わたしにとって、無限の闇、無限の空洞だった。 わたしは咄嗟に考えた。もう一生、恋愛などしないだろう、と。結婚もしない。男に対して淡い思いを抱くこともしない。自分は尼僧のように生きて死ぬことになるだろう、と......
単語の意味
漆黒(しっこく)
漆黒・・・漆を塗ったように光沢のある黒色。濃くて深い黒色。
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泣きそう・泣くのを我慢の表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
瞼の裏に熱いものがこみあげて来て
林芙美子 / 新版 放浪記
泣きそうなほど眉をひそめるけれど、すんでのところで絶対に泣かない、悲しみに耐える大人の男の表情で私を見つめる。
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
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失恋・恋人と別れるの表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
亜美ちゃんが大学生になり、彼が社会人になり、環境が変わったのが、別れる契機になった
綿矢 りさ / 亜美ちゃんは美人「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
なつかしい等(人名)、そのなつかしい肩や腕の線のすべてを目に焼きつけたかった。この淡い景色も、ほほをつたう涙の熱さも、すべてを記憶したいと私は切望した。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
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瞳が黒ぶどうのように濡れている
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
おさえていた感情が堰を切ってあふれるように泣きだした
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
「恋愛」カテゴリからランダム5
私と隆大は唇を重ねて、その瞬間に言葉を交わすことでは決して伝わらないものが、なにか光って消えた。
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
堪えきれない小さな溜息。指の間で糸を引く粘膜の震えるようす
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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