男はただ彼女をひとつの客体として”視”ているのだ。ちょうど船の乗客がデッキから、通り過ぎていく島のかたちを見つめるみたいに。

（欄干から頬杖を突いて、）開化した楊柳観音（ようりゅうかんのん）のように下を見つめていた。

ちょうど人の肖像をかこうとする画家が、その人の耳目鼻口をそれぞれ綿密に観察するように、君は山の一つの皺（しわ）一つの襞（ひだ）にも君だけが理解すると思える意味を見いだそうと努めた。実際君の目には山のすべての面は、そのまますべての表情だった。

冷静な心で、注意深く見る。

難解な図形を判読するようにじっと見る

ぎゅっとしぼりこむように私を見つめていたその目

顔を正面から直射するように見た。

復一はたじろいで思わず真佐子の正面を避（さ）けて横を向いたが、注意は耳いっぱいに集められた。

私たちは喋ることも忘れ、ばかみたいに口を開いて、長い時間それに見とれた。

目は涙でいっぱいになり、辺りはボンヤリ白く見えるだけ