TOP > 風景表現 > 地上・陸地 > 街の騒音・都会の喧騒
混じりあってそのひとつひとつの本来の意味を喪失してしまった人々のざわめきや、どこからともなく次々にあらわれて耳をとおり抜けていくこまぎれの音楽や、ひっきりなしに点滅をくりかえす信号とそれをあおりたてる自動車の排気音、そんな何もかもが空からこぼれ落ちてくる無尽蔵のインクのように夜の街に降りかかっていた。夜の街を歩いていると、そのようなざわめきや光や匂いや興奮の何分の一かは本当は現実に存在しないものであるように僕には思えた。それらは昨日や一昨日や、先週や先月からの遠いこだまなのだと。
村上春樹 / 双子と沈んだ大陸「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 ページ位置:53% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
街の騒音・都会の喧騒
歓楽街・盛り場
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......が僕の目の前に現われては消えていった。彼らは一方の意識の辺境から他方の意識の辺境ヘと移動しているように僕には感じられた。 街は変ることのないいつもの街であった。混じりあってそのひとつひとつの本来の意味を喪失してしまった人々のざわめきや、どこからともなく次々にあらわれて耳をとおり抜けていくこまぎれの音楽や、ひっきりなしに点滅をくりかえす信号とそれをあおりたてる自動車の排気音、そんな何もかもが空からこぼれ落ちてくる無尽蔵のインクのように夜の街に降りかかっていた。夜の街を歩いていると、そのようなざわめきや光や匂いや興奮の何分の一かは本当は現実に存在しないものであるように僕には思えた。それらは昨日や一昨日や、先週や先月からの遠いこだまなのだと。 しかし僕にはそのこだまの中に聞き覚えのある何かを認めることはできなかった。それはあまりにも遠く、あまりにも漠然としていた。 どれくらいの時間をかけてどれくらい......
単語の意味
木霊・谺(こだま)
木霊・谺・・・1.木に宿る霊。木の精霊。
2.(1が応えるものと考えられて)音や声が山や谷などの側面ぶつかって跳ね返ってきて聞こえる現象。山彦(やまびこ)。
2.(1が応えるものと考えられて)音や声が山や谷などの側面ぶつかって跳ね返ってきて聞こえる現象。山彦(やまびこ)。
ここに意味を表示
街の騒音・都会の喧騒の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
様々な音が混じりあったやわらかなうなりが、雲のように街の上に浮ぶ
村上 春樹 / 螢・納屋を焼く・その他の短編 amazon
街を行く人々の単調なざわめきが、海の底にいるかのように伝わってくる
柴田 翔 / されどわれらが日々 amazon
街の物音が、厚い膜に包まれたように、遠くかすかに響いて来る。
石坂 洋次郎 / 暁の合唱 (1954年) amazon
このカテゴリを全部見る
歓楽街・盛り場の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
冬の澄んだ空気にさまざまな店のディスプレイが映って、おとぎばなしのように美しかった。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「店・施設」カテゴリからランダム5
(臨海工業地帯の)光景にはそれなりに幻想的なものがあった。そこは都市の生活を地下で支える冥界のような場所なのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
水平線が、水のヴォリュームを押し上げるように正しい円を画いて取り巻く
大岡 昇平 / 野火 amazon
ぼんやりと青い空気の底に沈む淡くかすんだ街並み
よしもと ばなな / ムーンライト・シャドウ amazon
魚の群のように散歩着の人々が流れて
松谷 みよ子 / 夜「松谷みよ子の本 (第4巻) 童話・詩」に収録 amazon
かつて聞いたこともないほどの数知れない小鳥のさえずりが、嵐のように吹きこんでくる
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
同じカテゴリの表現一覧
店・施設 の表現の一覧
地上・陸地 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ