電気が消えると、尾崎の部屋は宇宙になる。高校のときに夏休みの課題で作ったというへたくそなプラネタリウムがぐるぐるぐると回って、尾崎の体を星が通っていく。

（雪の明かりが差し込む暗い室に裸の男性）彼の胸が闇の固まりになって目の前にあった。背中の方から雪の明かりが彼を包んでいた。ぼやけた光の中で、筋肉の輪郭が生々しく浮き上がっていた。

扉は音もなく開き、そして僕の前にはまったく別の種類の闇が広がった。

カーテンを引いた薄暗い部屋。冷たい輝きを放つメニュー画面。

（消灯した部屋でDVD鑑賞）パソコンの小さく発光する画面は、自宅のテレビで見ている時よりも、むしろ映画館にいる時のような没入感をもたらした。

看板の上の五燭の電燈がまるで、一つ目小僧のようで

暗がりに影のように立つ

濃い闇の奥を見つめる

（闇の中の一軒家）ただ一軒の人家しかない、そしてその家の燈（ひ）がちょうど戸の節穴から写る戸外の風景のように見えている、大きな闇のなかであった。街道へその家の燈（ひ）が光を投げている。

蝋燭の光はモノの形を光の世界と影の世界との二つにくっきり分けた

暗い部屋の中に、明るい光が平たい板のような形に射し込んできている。雨戸の隙間から射す朝の光だ。

長く使っていない部屋の空気が、雪の冷たさを閉じ込めておいたように背筋をひんやりさせる

日当たりとは無縁の、アパートの小さな露地庭

（古い造りの平屋）昔の家だからか、天井が低く、全体的にこぢんまりしている。玄関の正面にある襖は閉じられていて、にな川はその襖の脇にある磨りガラスの敷居戸を開けた。薄暗い板張りの細長い廊下が長く続いていて、靴下を通して、板廊下の冷たさが足の裏に染みてくる。今が初夏だということを忘れさせてくれる家だ。廊下の奥にある引き戸の先には、日当たりの悪い狭い庭があり、《…略…》庭には盆栽や古雑誌、旧式の小さな洗濯機や物干し竿なんかがあって、さしずめ屋根のない物置きといったところ。足元の生えっ放しの雑草には、蚊が群がっている。

隙間風が洩れているような寒々しい感じの部屋