夜も残り少なになる頃

一番電車が通り過ぎて行った

窓の外だけが極彩色の世界に生まれ変わりつつある。それはつまり今日一日が生まれ落ちる濃い瞬間なのだった。遠くまで、朝の光で海がかすかに照らされている。

朝が、幕をあげるように、するすると明け放れる

一番鳥（いちばんどり）が鳴きわたる時刻

空は赤白く曇って、山の端だけが、剥げたように透明になっていた。

蒲団を手摺（す）りにかけた。と、それはすぐ日向の匂いをたてはじめる

部屋を舞う埃が朝日に照らされ光っている

明るい秋の朝の光線が、三方の窓から洪水のように流れ込んで、数行に並んだ標本棚の硝子（ガラス）や、塗料のニスや、リノリウムの床に眩（まぶ）しく反射しつつ静まり返っている。

段々部屋中を華やかに照らしだす日の光

（都会の夜空）都市の世俗的な明かりが、いつものように星の姿をかき消していた。空はきれいに晴れていたが、いくつかのとくべつに明るい星が、ところどころに淡く散見できるだけだ。しかしそれでも月だけはくっきりと見えた。月は照明にも騒音にも汚染された空気にも苦情ひとつ言わず、律儀にそこに浮かんでいた。目をこらせば、その巨大なクレーターや谷間が作り出す、奇妙な影を認めることもできた。

西の空がかすかに赤かったが、それは街並に落ちるまでには至らなかった。光は、 暗澹あんたん と横たわる大気を射抜く力も 失せ、逆にすべての光沢を 覆うかのように忍び降りては死んでいく。ときおり、狂ったような 閃光 が 錯綜さくそう することはあっても、それはただ 甍いらか の雪や市電のレールをぎらつかせるだけで終わってしまう。

夕景に浮かぶビル群は、ぼんやりとしたブルーの空を後に、窓を虫食いのパズルのようにくっきりと光らせていた。

彼はしばらく空から降るような冷気の中で立ち止まり、また足を速めた。

あたかも雁が黄昏の先触れでであるかのように、急に空から黄昏が降りて

フロントガラスに木漏れ陽が明滅する湖岸道路を抜け

木立を透かして林の外の光がボーっとかすんで見える

陽の光が微細な粒になって、ほろほろと散ってくるような木漏れ陽

カーテンの隙間からあまく光が差してる

（風呂場に差し込む光）気持のいい日光が硝子窓を透して箱風呂の底まで差込んでいた。湯気が日光の中で小さな無数の粒になってモヤモヤと動いている。