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近所の陽来軒へ行き、固い焼きそばを注文する。固い焼きそばは口の天井に突き刺さって食べにくい。《…略…》このひと月、同じことを繰り返している。 いま睦男に歯向ってくるのは、陽来軒の固い焼きそばだけだった。焼きそばを食べているときだけ生きていて、あとは死骸みたいなものだった。
向田邦子 / マンハッタン「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 ページ位置:9% 作品を確認(amazon)
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だらだら暮らす
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前後の文章を含んだ引用
......しみの飛んだ曇った鏡に、三十八歳の職のない男のむくんだ顔がうつっている。空気が澱み、時間まで腐ってしまいそうだ。 十一時半になるのを待って、サンダルを突っかけ、近所の陽来軒へ行き、固い焼きそばを注文する。固い焼きそばは口の天井に突き刺さって食べにくい。食べにくいが、自分をいじめているようで気持がいい。たまには別のものを頼もうと思うのだが、席につくと、固い焼きそばといっていた。 このひと月、同じことを繰り返している。 いま睦男に歯向ってくるのは、陽来軒の固い焼きそばだけだった。焼きそばを食べているときだけ生きていて、あとは死骸みたいなものだった。 母親の遺してくれたアパートのあがりもあるから、すぐ暮しに事欠くことはないが、失業手当のあるうちに職を探さないといけない。かといって前より条件のいい勤め口があろ......
単語の意味
軒(のき)
軒・・・屋根の端の下にさがった部分で、建物の外壁より突き出ている部分。
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何の約束も期限も予定もない。ふやけたように実体のない毎日が、いくつもいくつも通り過ぎてゆく。 わたしは今、生活に関するあらゆる種類の面倒さを猶予されている。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
改めてソファにひっくり返り、昼近くまでうとうとする。十一時になると起き出して顔を洗う。歯磨きの白いしみの飛んだ曇った鏡に、三十八歳の職のない男のむくんだ顔がうつっている。空気が 澱み、時間まで腐ってしまいそうだ。
向田邦子 / マンハッタン「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
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カメレオンのように日常生活の表面の色を変える
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
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