夏草が背丈よりも高く生い茂る

アブラゼミがやかましく鳴く、蒸し暑い夏の午後

それらの虫どもは、夏の自然の端くれを粉にしたとも言いたいほどのごく微細な、ただ青いだけの虫

車内はむせるように暑くて、涼しげに飛び去ってゆく景色とかみあわなかった。頭がまひしたようで、うまく考えられなかった。

熱い頭を冷やすような真夏の夜の雨

外はすでに真夏の太陽が高く昇り、アスファルトを熱し始めている。

（蟹の這う音は）舟の中の、ありとあらゆるところから、蟹の這う音が聞こえてきた。それはベニヤ板の向こうからも聞こえていた。花火が夜空にあがっていく音にも似ていたし、誰かが 啜り泣いているような音にも思えた。

強風に巻き上げられた蛍たちが光の水しぶきのように降り注ぐ

たっぷりとふくらんだ線香花火の玉のひかりに、あたし達三人の顔がぼうっと照らされている。

残暑は厳しく、夜になっても一向に涼しくならない