美しい東洋の満月のさしこむ硝子張りの水族館のような箱（自動車）の中でいつの間にか眠ってしまった。

二人のまわりを夜の街が、夜光虫に彩られた海流のように流れ過ぎていった。

通りに面した窓を開けると、環状七号線の交通の音が遠い海鳴りのように聞こえる。

自動車がフィルムの影のように音もなく走り去る

ワゴン車は、どれも車体の沈むほどの商品を満載して、

地団太を踏むように、エンジンの唸り声が荒々しく響く

（キハ１２形が）トンネルに入ると、力強い動輪の音が耳を 塞いだ。

丸い赤色警光灯を覆面パトカーのルーフに装着し、サイレンのスイッチを入れた。途端に、耳を 聾する音響が響き渡った。一拍遅れて、前方を走行中の乗用車やトラックがハザードランプを点滅させて、次々と左側の路肩へ寄せてゆく。その様子を見計らうようにして、運転席の 柳 栄 次郎 巡査部長が前後左右を確認してからアクセルを踏み込んだ。

（はしけ）ランチが、本船の周りを水蜘蛛のようにグルグル廻りながらついて来た。

（新幹線が）トンネルに入る。暗いトンネル内は、水中に潜り、息を止めている気分になる。外の景色が出現すると、一瞬の息継ぎが許されたような開放感を得られる。