男が時々視線を投げてよこす

目の端で見たような気がする

ちらりと電光のように時雄の顔色を窺った

キラリと眼をそらす

（ホテルのフロントの）男は捻挫した猫の前足を眺める獣医のような目付きで、僕のはめているディズニー・ウォッチをちらりと見た

清彦の顔を刺し通すように見つめながら

照れたみたいに顔を背けて

グラスの中では澄んだ茶が氷の冷たい色に透けて、ゆっくりと溶けていた。私はそれを、じっと見ていた。心のピントが奇妙に何にでもうまい具合に合ってしまう夜がある。その夜がそうだった。もう酔いはじめていたのに、少しもそれが分散しようとしなかった。うす暗い店内と、靴音のように遠くから規則正しく寄せてくるピアノのメロディーが集中に拍車をかけた。

（覗き込む）女はその男の目のなかの黒目の少し濡れて輪っかになった部分を本当にのぞき込むような気持ちで見つめたから、まるで目薬を無理矢理に注がれたみたいに男はまたたくまに液体のような嫌悪感でいっぱいになった。

城戸は頷いたあと、グラスを空にして、しばらくその底に溜まった、傾けても恐らくは舌にまで届かないであろう数滴分の名残を見ていた。