つまらない話題だ。軽薄で意味のない会話だ。

話題が脈絡のないままあちこちへ飛ぶ、とりとめのないお喋り

大人が心底何気なく楽しめる会話は今この場で生まれる新鮮な会話の泉ではなく、相手の言葉の意味を聞き取り違えないように注意を払う必要もなく、気の利いた返しが素早くひらめく必要もない、ある程度自分の予測通りに会話の筋道が運ぶ、テレビで聞いたか他の人といったん話題にしたかした手垢のついた古いニュースだ。内容に集中しなくて良いときに初めて私たちは会話のキャッチボールを楽しめる。結局はいつも食べなれている家庭の味を、一番おいしいと感じるように。ありきたりのテーマをテーブルの真ん中に差し出し、なんら目新しくないそれを一人一人が順ぐりにくちばしで突つく。

その話はなんとなく共通の友人の結婚の噂話になり、その夫の株の失敗の話になり、カメラの性能の話になり、マンションのうまい購入方法の話になり、最後は虫歯の最新治療の話に落ち着いて

今の話を聞いてから急に軽蔑（けいべつ）したくなった。かれはなぜ両人の話しを沈黙して聞いていられないのだろう。負けぬ気になって愚（ぐ）にもつかぬ駄弁を弄（ろう）すれば何の所得があるだろう。

言葉が歯から漏れて一言一言の間に、シッシッ、という言葉が入っている

フウハア、フウハア、とラマーズ法を練習中の妊婦よろしく荒い息をつく。

屈託のない朗らかな混声が、色の絹糸を選り分けるように一つ一つ心よく聞き分けられた。

私の部屋でチーズケーキを食べながら、コーヒーを飲みながら、気楽な感じで言った。

口から泡を吹くようにして話す