スコールは右手の西南に去って、市街の出岬の彼方の海に、まだいくらか暗沫（あんまつ）の影を残している。

雨は止んでいて、空には晴れ間が覗いていた。雲の間から陽射しが覗く。車道の轍に溜まった水や、玄関脇のブロック塀の表面に浮いた雨の一滴一滴が、みるみる蒸発していくようでもあった。

朝早く雨が上がった

さっきまで降っていたらしく路面は濡れたままで、タイヤの溝がすくいあげた泥水がフェンダーに勢いよく当たり続ける。

雨が上がり月が雲の切れ間に見えてもなお、雨の匂いを残したままの街は夕暮れとはまた違った妙に艶のある表情を浮かべ

木の間からチラチラと射（さ）すいっぱいな日光の靨（えくぼ）

空は甘く曇っていて、ちょうど白いベールの向こうに青が透かし見えるような感じだった。

花曇りの空が林の上に眠っているように静か

ぼんやりとした花曇りの白い空

大きな赤い花が陽にすけて揺れていた。