延子をなくしてから父上はすっかり老い込んでおしまいになった。

（老いた体）年月の刻まれた肉体はいつでも人を切なくさせる。そしてその美しさと換えのきかなさに圧倒される。

自分をとり巻く若さという硝子のようなもの

誰でも年とともに食べものも変ってゆくものだが、身体が弱いだけに、それがはげしかった。ステーキやローストビーフの好きな人だったが、この二、三年は、うすい網焼き用の牛肉かひき肉しか食べなかった。

（老化）ある年齢を過ぎると、人生というのはものを失っていく連続的な過程に過ぎなくなってしまいます。《…略…》肉体的な能力、希望や夢や理想、確信や意味、あるいは愛する人々、そんなものがひとつまたひとつ、一人また一人と、あなたのもとから消え去っていきます。《…略…》あなたはもうそろそろ三十歳になる。これから少しずつ、人生のそういう黄昏｛たそが｝れた領域に脚を踏み入れようとしておられる。それが、ああ、つまりは年をとっていくということです。

精神主義は、多くは無能な者の隠れ蓑であることが多い

アパートに閉じ込もり、畳から湧いてくる湿気で、自分自身に黴が生えることを望む気分で、生きていた。

出たとこ勝負の賭けに出る

（落ちぶれて行く生活）あゆみは致死的な渦巻きの中心に向かって緩慢な、しかし避けることのできない接近を続けていた。

安逸な生を食傷するほど貪って一生を夢のように送る

鶴 のような痩せさらばえた老人

葉っぱが全部落ちた枯れ木のような老人

（四十代）顔全体が下がってくる

カーテンごしの青白い微光に浮かぶ顔は、昼の光を浴びたときよりもずっと年老いて見える。

加齢