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それは不思議な光景だった。通風口からじっと中をのぞきこんでいると、まるでその象舎の中にだけ 冷やり とした肌あいの別の時間性が流れているように感じられたのだ。そして象と飼育係は自分たちを巻きこまんとしている──あるいはもう既に一部を巻きこんでいる──その新しい体系に喜んで身を委ねているように僕には思えた。
村上春樹 / 象の消滅「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 ページ位置:88% 作品を確認(amazon)
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異様な風景 奇妙な感覚
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前後の文章を含んだ引用
......老象がいつもやる仕草ぴったりそのままであることが見てとれた。象は体を洗われるときに嬉しそうに右足で地面を叩き、いくぶん細くなったその鼻で飼育係の背中を撫でた。 それは不思議な光景だった。通風口からじっと中をのぞきこんでいると、まるでその象舎の中にだけ冷やりとした肌あいの別の時間性が流れているように感じられたのだ。そして象と飼育係は自分たちを巻きこまんとしている──あるいはもう既に一部を巻きこんでいる──その新しい体系に喜んで身を委ねているように僕には思えた。 僕が象舎の中を眺めていた時間は全部で三十分足らずだったと思う。象舎の灯りはいつもよりずっと早く、七時三十分には消え、それを境に全ては闇に包まれてしまった。僕は......
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光景(こうけい)
光景・・・1.目に前に広がる景色。そこに見える景色や物事のありさま。景色。様子。
2.日の光。
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