そばの匂いがとても高く、それにつられて食べてしまう

日本だけでそばが発達したのは日本の夏が暑く、湿気が多かったからだろう。そしてもう一つ、そばの微妙な風味が分かるのは日本人の舌しかなかったからだろう。

締めで食べる蕎麦。お酒が喉に染み渡ったあとに、蕎麦のツユが染み渡っていく感じも悪くない。

良質の粉に熱湯を入れて挽くといかにもそば粉らしい特有の香りが立つ。キチキチと快い音もする。

音を立てて食べていいのは蕎麦か煎餅のみである。どちらも下品で、したがってうまい。

スパゲティーの鍋からは気持の良さそうな白い湯気が立ちのぼり

太打ちのそばは遠い昔の江戸のそばを目前に見る思いがする

細かな油の玉が一面に浮いている汁に支那そばと豚肉がぶち込んであるのが出てきて思わずニヤニヤする

大抵のそうめんは味のみならず歯ごたえもあまりしなくて舌でも潰せる気がするのに対して、ここのそうめんは実にしゃっきりしている

見かけはまさに焼きそば。ニラの緑とニンジンの赤が鮮やかだ。箸ですすって一口。すすりこもうとすると、麺なのにズルズルとすすりこめない。ビーフンたちが抵抗の姿勢を示すのである。（中略）仕方なくスパゲティ風にグルグルとまとめて口に入れると、こんどはモサモサする。うどん、蕎麦、そうめん、スパゲティなどの小麦粉系とは明らかに違う口ざわりだ。モサモサ、そしてちょっとザラザラ。