心臓が一足毎に無気味にピンピン蹴（け）るようにはね上った。

どきんどきんと動悸が打つ気がする

心臓がトクトクなっている

心臓が破裂しそうなほどドキドキする。

顔を横にして、地面につけてみる。ひんやりとした。耳に意識を集中した。空気の音がした。地面の音がした。しばらくして、心臓の鼓動が感じられた。身体が弾む。気のせいかしだいに、鼓動は大きくなるようだ。肩の力を抜いてみた。目を閉じてみる。 　心音が僕を包む。落ち着く音だった。身体の中では血液が、爆発するように送り出されているのだろうが、その鼓動が心地よい。絶え間なくつづく、血液の循環だ。はるか昔、僕は誰かの腹の中で、この音を聞きながらよく眠っていたのだろう。守られている感覚がある。すっと力が抜ける。

小腸とおんなじような曲線でヌタクッている

黒血がその腹から、斑々（はんぱん）として砂にたれた。

心臓がその思いで獣のように鼓動した。

（肝臓）ぬるんとしたこの肉塊

（解剖を終えて、）後は縫合するだけだった。空になった胸腹部に、折りたたんで丸めて新聞紙を入れてボリュームを持たせ、縫い合わせていく。頭部も同様に動揺に縫うと、全身をきれいに洗って浴衣を着せた。はらわたが抜かれた分、解剖前より痩せて見える。