(失恋前の二股期間)千晶と恋におちながらも、野呂が平然とわたしとのつきあいを続けていた時期がある。それはわずか二か月ほどの間のことにすぎなかったが、わたしにはそれが一年にも二年にも感じられた。 本当に苦しかったのは、野呂から改まって別れ話を切り出された時ではない。野呂から愛の 残滓 のようなものを受け取っては、それを虚しく貪ろうとしていた、あの宙吊りの二か月間だったと思う。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:50% 作品を確認(amazon)
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失恋・恋人と別れる
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前後の文章を含んだ引用
......ど純粋ではない。もっともっと、薄汚れている。野呂という男を失いつつあると知った時、わたしは世間のあらゆる女が感じるであろう薄汚れた感覚にまみれながら過ごした。 千晶と恋におちながらも、野呂が平然とわたしとのつきあいを続けていた時期がある。それはわずか二か月ほどの間のことにすぎなかったが、わたしにはそれが一年にも二年にも感じられた。 本当に苦しかったのは、野呂から改まって別れ話を切り出された時ではない。野呂から愛の残滓のようなものを受け取っては、それを虚しく貪ろうとしていた、あの宙吊りの二か月間だったと思う。 わたしが野呂の携帯に連絡すると、野呂はそれまでとほとんど変わらない口調で応対した。「ああ、マヤ。元気か? どう? 『ユリイカ』のほうは順調?」「順調よ」とわた......
単語の意味
残滓(ざんさい・ざんし)
平然(へいぜん)
残滓・・・残りかす。
平然・・・慌てることなく落ち着きはらっているさま。全く動じていないさま。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
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ああ、オレの女、サユリ! さめざめ、さめざめ、さめざめ。コバヤシのようすは、まるで梅雨時の小雨のように湿気に満ち溢れていた。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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全身に暖かい 淫靡 な血が湧き始めた。それは、ゆったりとした大陸の河のように流れ続けて股間を満たして行った。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
言葉が終わると同時に、まち子は邦彦に近づいてきた。ただ単に、まち子は顔をあげただけかも知れなかったが、邦彦はそこに顔を埋めていった。それはすぐに離れて行ったが、初めて嗅いだ口紅の 匂いが、いつまでも邦彦の 唇 に残っていた。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
小旅行を企てたのは、男と別れたからだ。悲しかったからではなくて、どの男と別れても悲しくも辛くもないことに漠然とした焦燥を感じたからだ。一人旅の旅情にひたれば、少しは感傷が湧くかと思ったのだ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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