激しい変革の怒涛の逆巻く時代

とんでもない変化が起こりつつあって、大地の下でうごめく胎動が聞こえるような気がする

時代の革新の先頭に立つ

革命の嵐が国中を吹きまくる

革命の風雲が高潮に達する

男が二人、まるで壁を作るように立っている。

朽ち木を打つが如く何の手答えもない

黄塵を被り、土人形のようになり

陽の当たる所で見ると、一層ぼろい

ビロードのようなスベスベした誘い

終戦間もないころで、核家族などという言葉もなければ、テレビもなく、電気洗濯機の普及にも遠かった時代である。

生活全体が、その仏壇のように古風な伝統にみちていた。

十一月十一日の休戦布告後はよかれ、悪しかれ画時代的な社会の騒音が、ホテルの窓ガラスを叩いて伸子の心へも伝わって来ていた。

「さて、記憶とはあやふやなものです」響野はつづける。「脳の中にノートブックがあり、中を覗いてみると、思い出すべきことが日本語で丁寧に描かれている。大事なところにはマーカーまで引かれている。そんなことは決してありません。記憶というのはしょせんは脳の中のシナプスの伝達活動によって生じるものです。シナプスの電位変化が記憶となるのです。何年経っても同じ形状で残っている保証はどこにもないでしょう。それこそ記憶とは、思い出そうとしている今この瞬間の自分によって新たに創り出された、『記憶と思われるもの』にすぎないのです。創造物です。まさに、『歴史』が、権力者によって捏造された共通認識であるのと似ています。記憶は生のまま氷温保存されるわけではないのですよ」

（時代の流れに逆らえず飲み込まれる）時代というものがのしかかる