その話はなんとなく共通の友人の結婚の噂話になり、その夫の株の失敗の話になり、カメラの性能の話になり、マンションのうまい購入方法の話になり、最後は虫歯の最新治療の話に落ち着いて
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 ページ位置:52% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
雑談・世間話・とりとめのない会話
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......しまって、そのいちばん素敵の意味をきこうにも、彼女のほうではこのこと自体がどうでもいいような具合だったので、女は、まあ、大変よね、とかなんとか言ってみるだけで、その話はなんとなく共通の友人の結婚の噂話になり、その夫の株の失敗の話になり、カメラの性能の話になり、マンションのうまい購入方法の話になり、最後は虫歯の最新治療の話に落ち着いて、結局、女の知りたいことがはっきりと目のまえに現れることはいつだってないのだった。 ひとしきりを思い出して反芻したあと、でも、と女は紀伊國屋のワゴンの横で考える......
単語の意味
虫歯・齲歯(むしば)
虫歯・齲歯・・・むしばまれた歯。虫に食われたように、穴が開いたり欠けたりした歯。細菌によって侵されて、欠損した歯。齲歯(うし・くし)。「齲」は、訓読みで「むしば」とも読める。
ここに意味を表示
雑談・世間話・とりとめのない会話の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
小波のようにお喋りする。
小沼丹 / 椋鳥日記 amazon
大人が心底何気なく楽しめる会話は今この場で生まれる新鮮な会話の泉ではなく、相手の言葉の意味を聞き取り違えないように注意を払う必要もなく、気の利いた返しが素早くひらめく必要もない、ある程度自分の予測通りに会話の筋道が運ぶ、テレビで聞いたか他の人といったん話題にしたかした手垢のついた古いニュースだ。内容に集中しなくて良いときに初めて私たちは会話のキャッチボールを楽しめる。結局はいつも食べなれている家庭の味を、一番おいしいと感じるように。ありきたりのテーマをテーブルの真ん中に差し出し、なんら目新しくないそれを一人一人が順ぐりにくちばしで突つく。
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
あたしたちはしゃべって、しゃべって、相手のおしゃべりに耳を傾けて、相槌をうったり、頭を横にふったり、たまに黙って考え込んだりしながら生きている。コンビニの前に座り込みながら、駅の構内にたむろしながら、横断歩道を渡りながら、しゃべって、聞いて、頷いて、首を傾げている。そんな言葉に濡れるのなら文句はない。むし暑い夕方、俄雨に出会うようなものだ。気持ちいい。気持ちよくないのは、型通りの挨拶とか、教師の小言とか、もっと偉い人の説教とか、テレビの騒ぎとかだ。それはつるんとしていて突起がなく、いつだってしゅるしゅるとあたしたちの上を滑っていく。《…略…》言葉には突起がほしい。衣服や動物の毛にくっついて運ばれるちゃっかりものの種子のように、滑らないでくっついてきてほしい。あたしたちを無理やり押し流すんじゃなくて、あたしたちの内にちゃんと留まっていく突起のある言葉が、ほしいのだ。《…略…》くだらないと笑って捨てられそうな言葉の数々をあたしは懸命に紡いで、誰かに手渡す。受け取ってくれるやつは、たくさんじゃないけど、いるのだ。 突起がだいじ。しゅるしゅる滑るんじゃなくて、いがいがしてひっかかる、誰かにくっついていくための突起がだいじ……上手く言えないけど、そう思う。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
何かの話が思いがけなく色々の方へ移って行った。
小林多喜二 / 蟹工船
このカテゴリを全部見る
「声・口調」カテゴリからランダム5
かの女に云っているのか、独白なのかけじめのつかないような云い方だった。
岡本かの子 / 母子叙情
小林多喜二 / 蟹工船
そしてしばらくは葉子の絶望的な泣き声ばかりが部屋 の中の静かさをかき乱して響いていた。
有島武郎 / 或る女
発情した牝のように激越に熱情をこめて叫んでいる。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
同じカテゴリの表現一覧
声・口調 の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ
感覚表現 大カテゴリ
人物表現 大カテゴリ