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受話器をとったとき、そこから聞こえてくるのは激しい風音だけだった。 「ゴオオオオオオウ」という風音だけが、一八八一年のインディアンの一斉蜂起みたいに受話器の中に荒れ狂っていた。彼らは開拓小屋を焼き、通信線を切り、キャンディス・バーゲンを犯していた。 「もしもし」と僕は言ってみたが、僕の声は圧倒的な歴史の怒濤の中に空しく吸いこまれていった。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 ページ位置:38% 作品を確認(amazon)
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風の音
強風・暴風
電話で話す
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前後の文章を含んだ引用
......十六分だった。目覚まし時計が電話のとなりに置いてあって、僕は電話のベルが鳴るたびに時計を見ることにしているから、それについても僕の記憶は完璧である。 しかし僕が受話器をとったとき、そこから聞こえてくるのは激しい風音だけだった。「ゴオオオオオオウ」という風音だけが、一八八一年のインディアンの一斉蜂起みたいに受話器の中に荒れ狂っていた。彼らは開拓小屋を焼き、通信線を切り、キャンディス・バーゲンを犯していた。「もしもし」と僕は言ってみたが、僕の声は圧倒的な歴史の怒濤の中に空しく吸いこまれていった。「もしもし」 と僕は大声でどなってみたが、結果は同じだった。 じっと耳を澄ましているとほんのわずかの風の切れめから女の声らしきものがちらりと聞こえたような気がし......
単語の意味
圧倒(あっとう)
圧倒的(あっとうてき)
圧倒・・・ひときわ優れた力を持っていること。他よりとても勝っていること。また、その力で相手を押さえつけること。
圧倒的・・・他とは比べ物にならないほど優れていること。
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(受話器の向こうから)リビングダイニングに居るのだろう、夕飯の支度をする(宮下の)妻と子供たちの様子がダイレクトに伝わってくる。宮下が手で受話器を囲って周囲の雑音が入らないようにしたのがわかった。だが穏やかな雰囲気は完全に消えることはない。
鈴木 光司 / らせん amazon
「最悪ぅ。」 と遠いラインの向こうで栄子が言った。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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プールからは子供たちのはしゃぐ声が風に乗って伝わってくる。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
「風」カテゴリからランダム5
風が絶えず颯々と響きを立てて耳元を過ぎる
大岡 昇平 / 野火 amazon
硬質な建物の隙間から現れた春風がふわりとわたしたちに覆いかぶさると
松村栄子 / 至高聖所 amazon
あるかないかの風が花房をかすかに揺する
永井 路子 / 朱なる十字架 amazon
崖の花をなめて行く海風のように、野の風が首筋へ滑って行く
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
「動き・反応・変化・現象」カテゴリからランダム5
月から射し下ろして来る光線を溯 って、それはなんとも言えぬ気持で、昇天してゆく
梶井基次郎 / Kの昇天
ケーキを切ろうとして、とりあえずいちごをどけておくように、ひーちゃんは教室の入口にたまっていた女子たちに「邪魔だよ」と言った。
朝井 リョウ / ひーちゃんは線香花火「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「電話」カテゴリからランダム5
まるで発作のたかまりの究極で、生命の糸が引きちぎられるかのように、ぷつんとその電話は切れた。そしてあとには漂白されすぎた下着のような暖かみのないがらんとした沈黙だけが、残った。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
(相手が電話に出ない)コール音が深い底無しの虚無の中におもりを垂らすようにいつまでもいつまでも鳴り響いていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
電話機は今にも鳴り出しそうに見える。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
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