TOP > 風景表現 > 外の設備・工作物 > 夜景・夜の眺め
山の中腹に立つ彼のアパートからは闇の中に雑然とばらまかれた人々の営みをくっきりと見下ろすことができた。時折鼠は両手を腰にやり、まるでダウンヒルのコースに立ったゴルファーのように、何時間も意識を集中してそんな風景を眺めることがあった。《…略…》そして暗い海、海と空の闇は区切りようもないばかりに溶け合い、その闇の中に灯台のオレンジ色の光が浮かび、そして消えた。そしてはっきりと区切られたそれらの断層の間を暗いフェアウェイが一筋貫いている。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
夜景・夜の眺め
見下ろした風景
地平線・水平線
灯台
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......がよく手入れされたバガジェリーのショルダー・バッグと小さな腕時計が並べられていた。 鼠は向いの籐椅子に腰を下ろし、煙草をくわえたままぼんやりと窓の外を眺めた。 山の中腹に立つ彼のアパートからは闇の中に雑然とばらまかれた人々の営みをくっきりと見下ろすことができた。時折鼠は両手を腰にやり、まるでダウンヒルのコースに立ったゴルファーのように、何時間も意識を集中してそんな風景を眺めることがあった。斜面はまばらな人家の灯を集めながら、足下をゆっくりと下っていた。暗い林があり、小さな丘があり、処どころに白い水銀灯の光が個人用のプールの水面を照らし出している。斜面がやっと傾斜を弱めるあたりに、まるで地表に結ばれた光の帯のように高速道路が蛇行し、そこを越えた海までの一キロばかりを平板な街並みが占めていた。そして暗い海、海と空の闇は区切りようもないばかりに溶け合い、その闇の中に灯台のオレンジ色の光が浮かび、そして消えた。そしてはっきりと区切られたそれらの断層の間を暗いフェアウェイが一筋貫いている。 川だ。 鼠が初めて彼女に会ったのは空がまだ僅かに夏の輝かしさをとどめている九月の初めだった。 鼠は新聞の地方版に毎週掲載される不要物売買コーナーで、ベビー・サ......
単語の意味
雑然(ざつぜん)
中腹(ちゅうふく)
風景(ふうけい)
腰(こし)
雑然・・・いろいろなものが交じり合って整ってないさま。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
中腹・・・山の頂上とふもとの中間あたりの場所。山腹(さんぷく)。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
腰・・・1.胴体の下の方の部分で、上体と下肢(かし)をつなぐ部分。座る姿勢をとったとき、骨盤あたりの折り曲がる部分を漠然という。ウエスト。
2.衣服やはかまの腰にあたる部分。
3.あらゆる物の、腰に相当する部分。中ほどより少し下の部分。
4.紙や布などの、しなやかで破れにくい性質。
5.餅(もち)や粉などの、粘りや弾力。
6.刀や袴など、腰につけるものを数えるときの単位。「刀ひと腰」「袴ひと腰」
7.何かをする際の姿勢や構え。「及び腰」「けんか腰」など。
2.衣服やはかまの腰にあたる部分。
3.あらゆる物の、腰に相当する部分。中ほどより少し下の部分。
4.紙や布などの、しなやかで破れにくい性質。
5.餅(もち)や粉などの、粘りや弾力。
6.刀や袴など、腰につけるものを数えるときの単位。「刀ひと腰」「袴ひと腰」
7.何かをする際の姿勢や構え。「及び腰」「けんか腰」など。
ここに意味を表示
夜景・夜の眺めの表現・描写・類語(外の設備・工作物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
灯入り模型都市のような遠景
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
このカテゴリを全部見る
見下ろした風景の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
地平線・水平線の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
空と海が交わるあの奇跡の直線
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
大きな島がその水平線に灰色の姿を見せていた
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
灯台の表現・描写・類語(水面・水中・水辺のカテゴリ)の一覧 ランダム5
灯りが海面に映って、十字なりに伸びたり縮んだりする
島尾敏雄 / 夜の匂い「出孤島記」に収録 amazon
銀色の燈台
林芙美子 / 新版 放浪記
近くの沖にゆっくり明滅している廻転燈台の火
梶井基次郎 / 冬の蠅
林芙美子 / 新版 放浪記
このカテゴリを全部見る
「水面・水中・水辺」カテゴリからランダム5
絞ったまま乾いた汚れ雑巾のようなカモメの体(死体)
日野 啓三 / 夢の島 amazon
岩を噛む波の音が嵐のように凄まじく聞こえる
円地文子 / 女坂 amazon
川の流れというものが、水源地の変化や、流域の地質の硬弱によって、絶えず方向と様相を変化させつつあるのは、何か生きてのたうつ爬虫類のようにも感じとれる。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
頭上に広がる青空を 宛ら に映したような海原と彼方の海岸線
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
ビル群の谷間へ埋め込まれたような、お初天神
池波 正太郎「むかしの味 (新潮文庫)」に収録 amazon
動くものの影とてない荒涼たる砂の海
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
羊の群れのように見える白い岩
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
「外の設備・工作物」カテゴリからランダム5
遠く上野の電気燈が鬼火のように見えているばかりだ。
広津 柳浪 / 今戸心中 amazon
切紙細工のような都会の夜景
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
同じカテゴリの表現一覧
水面・水中・水辺 の表現の一覧
地上・陸地 の表現の一覧
外の設備・工作物 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ