双子たちはそのあいだ野菜を切り肉を炒め米を炊いた。《…略…》ヘンデルの「レコーダー・ソナタ」をひっぱり出してプレイヤーに載せ、針を下ろした。《…略…》レコーダーとヴィオラとチェンバロのあいだに通奏低音のように肉を炒める音が入っていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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生活音
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......体を拭き、ベッドに寝転んだ。洗って干したばかりのコーラル・ブルーのしわひとつないシーツだった。僕は天井に向けて煙草を吸いながら、一日の出来事を頭に思い浮かべた。双子たちはそのあいだ野菜を切り肉を炒め米を炊いた。「ビール飲む?」と一人が僕に訊ねた。「ああ」 208、というシャツを着た方がベッドまでビールとグラスを運んでくれた。「音楽は?」「あればいいな」 彼女はレコード棚からヘンデルの「レコーダー・ソナタ」をひっぱり出してプレイヤーに載せ、針を下ろした。何年も昔のバレンタイン・デーに僕のガール・フレンドがプレゼントしてくれたレコードだ。レコーダーとヴィオラとチェンバロのあいだに通奏低音のように肉を炒める音が入っていた。僕と僕のガール・フレンドはこのレコードをかけっぱなしにしたまま何度もセックスしたものだ。レコードが終り、針がパチパチと音を立てて回りつづけるまで、僕たちは何も言......
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どこかで布団を叩く音が鞭のように聞こえる
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
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一人で教室に戻ると、西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や椅子の上に流れ落ちている。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
向うの窓硝子は斑 らに外気に曇った上に小さい風景を現していた。
芥川竜之介 / 歯車
間を置いて何度もノックを繰り返した。一連のノックがあり、十秒か十五秒ばかり休止があり、それから再びノックが続いた。躊躇や迷いのない断固としたノックで、音は不自然なくらい均質だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
狭いプレハブの事務所には冷房がなく、事務机の横に置かれた真新しい感じの扇風機が音もなく回っている。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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