洞窟を出た人が急に陽の目に当るときは眼を害する惧 れから、手で額上を覆っているという心理に似たものがあった。
岡本かの子 / 雛妓 ページ位置:78% 作品を確認(青空文庫)
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......だこの時分は雌伏時代に属していた。嘗て魔界の一ときを経歴したあと、芝の白金でも、今里でも、隠逸の形を取った崖下 であるとか一樹の蔭であるとかいう位置の家を選んだ。洞窟を出た人が急に陽の目に当るときは眼を害する惧 れから、手で額上を覆っているという心理に似たものがあった。今ここの青山南町の家は、もはや、心理の上にその余翳 は除 けたようなものの、まだ住いを華やがす気持にはならなかった。 それと逸作は、この数年来、わたくしを後援し出し......
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