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弟のいない暮らしは、音のない映画みたいに、なにかが欠けている感じがした。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:56% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
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......いから、そんなことは考えない。 でもここでは、何もかもが白紙だから、強まる。ここにこの人と私がいて、別々の人間なのに特別色濃くなにかを重ね合わせていることが。 弟のいない暮らしは、音のない映画みたいに、なにかが欠けている感じがした。 弟の部屋の前を通るたびに、死んだわけでもないのに真由や父の写真を見た時と同じようにきゅんとした。少しだけ、心に影が落ちるような感じがした。 なにをしていても、......
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(喪失感をまぎらすためにジョギングを始めた私と亡くなった彼女のセーラー服を着て過ごす柊という男)彼のセーラー服は私のジョギングだ。全く同じ役割なのだ。私は彼ほど変わり者でないので、ジョギングで充分だっただけのことだと思う。彼はそのくらいでは全くインパクトに欠けて自分を支えるにはもの足りないのでバリエーションとしてセーラー服を選んだ。どちらもしぼんだ心にはりを持たせる手段にすぎない。気をまぎらわせて時間をかせいでいるのだ。 私も柊もこの二カ月で、今までしたことのない表情をするようになった。それは失ってしまったものを考えまいと戦う表情だった。ふっと思い出して突然に孤独が押してくる闇の中に立っていると知らず知らずのうちにそういう顔になってしまうのだ。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
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布団のように切り裂いた死体を縫った。
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
どうせ自分自身は電子か何かになって、箒星 のお先走りでも承 るつもりでいたし
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