ソファに身を預け、しばらく無言で互いの胸の裡を探っていた

二人の視線が縄のように捩れて絡まる

彼女は周囲を見渡していた一人と目が合った。しかし、そんな気がしただけかもしれない。

その問いかけるような、それでいて、既に彼を十分に理解しているようなふしぎな 眼差し

ピアノをやめることを惜しいとは思わなかったの？　あと一歩というところまで行ったのに」 　ミュウはその答えを逆に求めるように、すみれの目をじっとのぞき込んだ。深くまっすぐな視線だった。その一対の瞳の底では、急流の中のよどみのように、いくつかの無言の流れがせめぎあっていた。それらの流れが巻き起こしたものが、本来の場所に落ちつくのにいくらか時間がかかった。 「余計なことをきいてごめんなさい」とすみれは謝った。 「それはいいのよ。ただわたしにもまだうまく話せないだけ」

（山目付、山を監視しているが平和でヒマ）春の山に菌（きのこ）を求めているような役

自分の意志とは無関係に、まぶたが大きく開いていく。からからに乾いた眼球の表面が、じっと湖を見つめ続けている。

体左半分だけのぞかせて、真剣にこちらを見ている

眼の中が布を張ったように霞む

二人の後ろ姿が門を出て遠ざかっていって、陽にさらされた庭は、がらんとして見えた。