赤銅色の裸体

月の光に洗われて、すみれの裸体は古代の陶器のように艶やかだった。

鈴子の弾力に富んだ白い体

すみれの裸体は、浜辺の圧倒的な日差しの下で目にしているときとはまったく違ったものに見えた。居心地悪く残された子供っぽい部分と、時の流れが盲目的にこじ開けた一連のま新しい成熟とが渦のように混じりあい、生命の 疼きをそこに描き出していた。

二人で銭湯へ行く。二人の小さい裸体が朝の鏡に写っている。マイヨールの彫刻のような二人の姿が、二匹の猫がたわむれているようだ。

母からの愛情をエネルギー源として動く、小動物のよう

幼稚園の子どもたちが、まるでメダカか、オタマジャクシみたいに見える

傍（そば）で砂いじりしている子はおいたさんと呼ばれるほどの一くせありげないたずらっ子の男児（おとこのこ）

甥っ子は眠っていて、頬に人差し指で触れると水ぶくれを撫でたような奇妙な柔らかさを感じた。

（知人の息子）あの作楽井氏の人懐（ひとなつ）っこい眼元がこの紳士にもあるような気がした。

ねずみの子のようにぐにゃ・ぐにゃした赤ん坊

ロンパースの裾からのぞくリエの足は、バターの塊のように滑らかで白かった。

（赤ん坊は）ぷっくりと肥え、黒目ばかりの瞳をきょろきょろさせ、まばらな髪の毛が好き勝手に頭に張りついている。

眠くなると手がつけられないぐずり方をする

水のように透き通った赤坊

中学生のような初々しさ

てかてか光る、希望に満ちた顔を見ていた。美しさや若さは、ただそこにあるだけで未来という言葉を含んでいる。

華やいで笑う二人の中年女を見ていた。ランプに照らされた二人のつるつるした笑顔は日常に見せるそれとは全く違って、本当に時間をこえてここにいるように若く、希望に満ちていた。

子供など 所詮、慰みものにすぎん。おのれの生きた証をそれにしか見いだせない男が、子を作り、後生大事に可愛がるのだ。

木下君は今や人間のありとあらゆる幸福を、いや全人類の青春を一人で背負って立っているようなものです

浴衣を着て両国界隈を歩けば、かなり上位の関取に間違われるはずだ。

わずかに俯いた彼の横顔で白く濁った日光が弾け、表情を塗りつぶした。白い凹凸だけになった微笑が、仮面のように被さっていた。

長身の、筋肉質ではないが、よくしなりそうな美しい身体の線をした男だった。

夜中の食欲は 悪霊 だ。個人の人格と独立して機能している。 　アルコールも、暴力も、ドラッグも、恋愛も。多分、ダイエットすら。 　 耽溺 はみんな同じだ。 　善悪ではない、生きている。そしてやがて飽きる。飽きるか、取り返しがつかなくなるか。そのどちらか。 　飽きると知っていても波のようにくりかえしやってくる。姿形を変え、浜を洗い、よせてはかえし、静かに、激しく。 　くりかえす、過ぎていく。 　遠い風景。緊張と緩和がもたらす人生の、永遠の海辺。

鮠（はや）のようにかぼそいきゃしゃな女