女の声は不穏な唸り声から、雌の鳴声に変わった。それにつれて、男の息遣いが伝わってきた。

彼女は天吾の勃起していないペニスを、眠り込んだペットを扱うみたいに手のひらに載せて、その重さを量りながら

彼は自分の人差し指と中指をＶの字にして当てた。そして、それをゆっくりと移動させ彼女の目を閉じさせた。まるで、目を開けた死体に対してするように。

（レズビアン）それから下着の中に彼女の細くてやわらかい指が入ってきて、《…略…》男の人のごつごつした指でやられるのとは全然違うのよ。凄いのよ、本当。まるで羽毛でくすぐられてるみたいで、私もう頭のヒューズがとんじゃいそうだったわ。

生ぬるい精液の味

息苦しさに胸を押える。

（かかってくるはずのない元カレの電話）たとえ通じ合うことはなくても、それでも複雑な回線の末端と末端に自分と黒崎がいる、そんな感覚を持ち続けていたい

時々訪れる偶発的なセックス

どちらの意思というのでもなく後背位で重なり合うとき、十和子は自分が部屋の向こう側からこの交接の一部始終を眺めているような気分になる。我を忘れた者の表情を浮かべて喘ぐ自分を計算し観察している。映画のなかの数限りない情交シーンが入り乱れて浮かぶ。それらの架空のシーンが現実の行為にのりうつり、支配しようとする。

劇烈な物語にふさわしくない子守唄のような愛撫