火の壁をくぐって、亡霊のような人影がもつれ合いながらよろめき出る

炎が出口を求めて上へ下へ渦巻く

黒煙の隙間からオレンジ色の炎が見えかくれする

痛みを伴った熱気が蜂のように襲い掛かってくる

熱を帯びた黒い煙が部屋の中へ入ってくる

半鐘がジャンジャンと鳴る

ＲＶ車が飛び出してくるのを雪子は確認した。左手の小さな小道から、それこそ示し合わせたように、出現した。巨大猪のような顔に見えた。野蛮な図体が雪子の運転する車に向かってきた。

（捜査に行き詰る）道はそこで途切れ、その先は深い森になっている。

（犯罪者を死刑にするのではなく更生させるのが大事という考え）社会全体を一つの大きな生き物として考えますとね、悪いところを切り捨てていっても強く健康な生き物にはならないですよ。生命力が一番大事なんです。生命力とは自浄能力であり再生能力であると。犯罪者の更生もそういうことなんですね。切り捨てればいい社会になるかというと、そうじゃない。それはある意味、不健全なんです

青天の霹靂のごとく事件が突発する

焦（こ）げ爛（ただ）れた餅の死骸

キャンドルの光が揺れるたび本棚や掛け時計の一部がチラッと光って消える

寒い北風が背中へ烈しく吹きつける。瓦焼きの黒い烟けむりが風に押しつけられて、荒れた 燻銀いぶしぎん の海の上を、千切れ千切れになって飛んで行く。

煙草の煙が立ち迷っている。

土間のまん中では榾（ほだ）が赤く燃えてゐました。日光の棒もそのけむりのために青く見え、またそのけむりはいろいろなかたちになってついついとその光の棒の中を通って行くのでした。