男の子の横顔が、かげりはじめた陽の光に染まっていた。ほっそりした輪郭が、揺らめいて見えた。

陽がどんどん傾いていく。陽射しの透明さが増していく。金色が木々を照らす。

大きなユーカリ樹が黒い姿を夕暮の空気の中にはっきりと印している

日の目が見えなくなる

紅い鼻緒の立った籐表の女下駄が、日ぐれどきの玄関のうす明りに、ほんのりと口紅のように浮んでいる

高瀬舟は、黒い水の面（おもて）をすべって行った。

西の空がかすかに赤かったが、それは街並に落ちるまでには至らなかった。光は、 暗澹あんたん と横たわる大気を射抜く力も 失せ、逆にすべての光沢を 覆うかのように忍び降りては死んでいく。ときおり、狂ったような 閃光 が 錯綜さくそう することはあっても、それはただ 甍いらか の雪や市電のレールをぎらつかせるだけで終わってしまう。

日の目が見えなくなる

夜は 殆ほと んど明け放れていた。

飯盒を火にかけて番をしていた。火が彼の顔を明るく照し出すほど、いつかあたりは暗くなっていた。