「穴が空いたような」心の空白に、今は止め 処 もなく寂しさが染み出している。

（親しいと思っていた人の）その姿がちょうど双眼鏡を逆に見た時のように急に自分から遠のき、小さくなって了しまったように感ぜられた。そして誰も彼もが。それは本統に孤独の味だった。

絶望的な孤独感

胸が締め付けられるような淋しさ

脇に空洞が掘られたようなガランとした寂しさ

鼠（人名）にとっての時の流れは、まるでどこかでプツンと断ち切られてしまったように見える。《…略…》切り口をみつけることさえできない。死んだロープを手にしたまま彼は薄い秋の闇の中を彷徨った。草地を横切り、川を越え、幾つかの扉を押した。しかし死んだロープは彼を何処にも導かなかった。羽をもがれた冬の蠅のように、海を前にした河の流れのように鼠は無力であり、孤独であった。何処かで悪い風が吹き始め、それまで鼠をすっぽりと取り囲んでいた親密な空気を地球の裏側にまで吹きとばしてしまったようにも感じられる。

ぽつんと一人広い野原の真ん中に取り残されたような思い

悲しくて一人ぼっち

（完全に打ち解けていない）彼らには薄い膜が張られている。笑顔や絡まる視線などでちょっとずつ張られていく膜だ。膜は薄くて透けているのにゴム製で、私が恐る恐る手を伸ばすと、やさしい弾力で押し返す。多分無意識のうちに。そしてそんなふうに押し返された後の方が、私は誰ともしゃべらなかった時よりも、より完璧に独りになる。

一人のこうした当のない旅でのトンネルは、なぜかしんみりとした気持ちになる。

寂しい虚白なものが、娘の美しさを一時飲み隠した。それは、もはや二度と誰もこういう方面に触る話をしようとするものはなくなったほど、周囲の人間に肉感的なもの、情慾的なものの触手を収斂（しゅうれん）さす作用を持っていた。

心の寂しさが満ち潮のようにゆっくりと押し寄せてくる

寂寞を感じる

黒雲のような寂しい感情

真夜中の底にひとりで突き落とされる。