西部劇から引っ張り出してきたかのようなテンガロンハット

新聞を並べた台の傍に、古ぼけた鳥打帽（とりうちぼう、ハンチング帽のこと）を被った爺さんが背中を丸めて坐っているのを見ると、何となく昔の倫敦（ロンドン）がぽつんとそこに残っているような気がする。

（ウェスタンハット）サイドが高くトップには窪みがある独特の形状。丸い大きな庇は左右で跳ね上がるように反り返っている。強靭なフェルトで作られた、無骨で勇ましい開拓者たちの帽子。《…略…》 往年の西部劇スター、ジョン・ウェインやヘンリー・フォンダ、あるいは往年の名レスラー、スタン・ハンセンの入場シーンでお馴染みの、あの帽子である。

その帽子によって、鳥飼重太郎なる人物が、いっそう、精彩を加えたよう

帽子を被るほど寒さを感じた事はない

白髪と、 頰骨のあたりの、生気のない老いた 皺 のある皮膚の色

老体が骨ばかりのように痛ましい

言葉を交わすこともなく別れた。 　しばらくして振り返ってみると、宮本さんのお母さんがとにかく静かに、静かに、同じ速度で夜の中を歩いて行くのが見えた。私とすれちがったことなどわかっていないような静けさだった。

すいません、この年になると、涙もろくなってしまって──。

一日一日生命の力から遠ざかって行く老人

制服の垣（人名）は、有刺鉄線のように、ひきしめられ、とげとげしくなった。

乞食（こじき）のような服装（ふくそう）

透明な貝で作られたブローチ

白い絹の部屋着が太股の上で渦を巻いて、菓子の上に飾られる薔薇の花のクリームを思わせる

腕時計が、疣（いぼ）のように小さく見える魁偉な手首

私は夜が好きだ。私は夜のように早く年をとりたい。

（銭湯の）番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。

一日一日生命の力から遠ざかって行く老人

（老化）ある年齢を過ぎると、人生というのはものを失っていく連続的な過程に過ぎなくなってしまいます。《…略…》肉体的な能力、希望や夢や理想、確信や意味、あるいは愛する人々、そんなものがひとつまたひとつ、一人また一人と、あなたのもとから消え去っていきます。《…略…》あなたはもうそろそろ三十歳になる。これから少しずつ、人生のそういう黄昏｛たそが｝れた領域に脚を踏み入れようとしておられる。それが、ああ、つまりは年をとっていくということです。

彼女が、愛に削られて劣化していく。きっと、あっという間に輝きのない平凡な女の人になる