(ボーっと歩く)手や足や胴体がそれぞれ勝手に歩行の真似事をしてはいるが、身体の主は不在だとでもいうような頼りなさだ。《…略…》空っぽだ。歩いてくるもののなかに何も入っていない。《…略…》普段の陣治を突き動かす情動のすべてが、すっぽり抜け落ちてしまっていた。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
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ぼんやり・朦朧・ボーっとする
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前後の文章を含んだ引用
......える。歩調を変えずに近づいていく十和子には気付きもしない。 距離が狭まるにしたがって、何かが異様だと十和子は感じる。まず歩き方か。肩や頭がひょこひょこ上下する。手や足や胴体がそれぞれ勝手に歩行の真似事をしてはいるが、身体の主は不在だとでもいうような頼りなさだ。華やかなコートを着た女が、心持ち避けるように陣治とすれ違う。 人違いではないか、同種の作業服を着た別の男ではないかと十和子は目を凝らす。だがそれは間違いなく陣治......<中略>......い抜きざま、後ろから陣治の肩にぶつかる。一足二足つんのめる身体は、けれどもゆらっと立ち直り、何ごともなかったふうにまた歩きはじめる。その様子が現実離れしている。空っぽだ。歩いてくるもののなかに何も入っていない。それでいて目の穴からは、何かに憑かれた人間のぬきさしならない狂気が、今にも黒く溢れ出てきそうだ。 喉の奥が冷たくなる。すぐ先の横断歩道の信号が青に変わったので、十和子は人の流れに身を隠すようにして道路を反対側に渡る。 見るべきではないものを見た気がする。あれは顔ではない。少なくとも陣治の顔ではない。剥き出しの喜怒哀楽や、屈折した自己顕示や、くすぶるような憤懣や、普段の陣治を突き動かす情動のすべてが、すっぽり抜け落ちてしまっていた。 シャンプーだけを買ってレジを通るわずかな間に、街は冷えきった夜になっている。 自然と小走りになる。信号待ちで立ち止まっている間、押し返しても押し返しても不安が......
単語の意味
身体(しんたい)
足・脚・肢(あし)
身体・・・人のからだ。肉体。
足・脚・肢・・・1.動物の胴体の下から左右に分かれて伸びている部分で、歩いたり体を支えるのに用いる部位。とくに、足首から下の部分をさすこともある。
2.台を支える棒状の部分。物の本体を支える、突き出た部分。また、地面に接する部分や、物の下や末端部分。「テーブルの足」
3.歩くこと。走ること。また、その能力。「足が速い選手」
4.行くこと。また、来ること。また、そうするための手段や乗り物。「客の足がとだえる」「足の便がいい」
5. 餅(もち)などの粘り。こし。
6.損失。欠損。借金。また、旅費。
7.その他、足の形や動きから連想されできた表現として、
・食べ物の腐りぐあいや、商品の売れ行き。「足がはやい」
・(脚)漢字を構成する部分で、上下の組み合わせからなる漢字の下側の部分。「照」の「灬(れっか)」、「志」の「心(したごころ)」など。
・雨や雲、風などの動くようす。「細い雨の足」
・(足)過去の相場の動きぐあい。
2.台を支える棒状の部分。物の本体を支える、突き出た部分。また、地面に接する部分や、物の下や末端部分。「テーブルの足」
3.歩くこと。走ること。また、その能力。「足が速い選手」
4.行くこと。また、来ること。また、そうするための手段や乗り物。「客の足がとだえる」「足の便がいい」
5. 餅(もち)などの粘り。こし。
6.損失。欠損。借金。また、旅費。
7.その他、足の形や動きから連想されできた表現として、
・食べ物の腐りぐあいや、商品の売れ行き。「足がはやい」
・(脚)漢字を構成する部分で、上下の組み合わせからなる漢字の下側の部分。「照」の「灬(れっか)」、「志」の「心(したごころ)」など。
・雨や雲、風などの動くようす。「細い雨の足」
・(足)過去の相場の動きぐあい。
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意識が朦朧としてきて、抛(ほう)り出された手鞴(ふいご)のようにしぼんで行こうとした。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
指で窓ガラスに線を引くと、そこに女の片眼がはっきり浮き出たのだ。彼は驚いて声をあげそうになった。しかしそれは彼が心を遠くへやっていたからのことで、気がついてみればなんでもない、向側の座席の女が写ったのだった。
川端康成 / 雪国 amazon
熱湯の中を漂うように、喧騒の中で沈んでいた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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靴の底と地面との間にどうしても生じてしまう何センチかの空白を踏んで、ふわふわと歩く。水島の手が肩に置かれていなければ、このまま舞い上がってしまいそうだ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(頭の中が)鉛か腐った泥を詰めたような状態
拓殖久慶 / ラオス内戦 amazon
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