私は散歩に出るのに二つの路を持っていた。一つは渓 に沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った吊橋 を渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。それに比べて山径の方は陰気ではあったが心を静かにした。どちらへ出るかはその日その日の気持が決めた。
梶井基次郎 / 筧の話 ページ位置:0% 作品を確認(青空文庫)
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散歩
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前後の文章を含んだ引用
私は散歩に出るのに二つの路を持っていた。一つは渓 に沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った吊橋 を渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。それに比べて山径の方は陰気ではあったが心を静かにした。どちらへ出るかはその日その日の気持が決めた。 しかし、いま私の話は静かな山径の方をえらばなければならない。 吊橋を渡ったところから径は杉林のなかへ入ってゆく。杉の梢 が日を遮 り、この径にはいつも冷たい湿っぽさがあった。ゴチック建築のなかを辿 ってゆくときのような、犇 ひしと迫って来る静寂と孤独とが感じられた。私の眼はひとりでに下へ落ちた。径の傍らには種々の実生 や蘚苔 ......
単語の意味
陰気(いんき)
沿う・添う・副う(そう)
陰気・・・気分や天気などが、スッキリしない。明るくなく、ドンヨリしている。⇔陽気。
沿う・添う・副う・・・1.(「沿う」と書いて)長い線状のものの近くを離れずに平行に進む。つたっていく。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
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どれくらいの時間をかけてどれくらいの距離を歩いたのか、僕にはわからなかった。
村上春樹 / 双子と沈んだ大陸「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
ぶらりと外へ出た。珍しく着流しに草履ばきで、日蔭を拾った。
吉川英治 / 銀河まつり
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急ぎ足で一直線に歩き去って行く
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
追われる者のように、真っ直ぐに前を向いたままずんずん足を急がせる
福永 武彦 / 草の花 amazon
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