遠くの、眉程の山裾

急行列車のような速度で、彼の傍から遠く彼の手のとどかぬところへ走り去りながら

遠くの空の雁のように、見る見るすげなく遠ざかって行く

日差しに吸いこまれていく。その姿がどんどん遠くなっていく。

手を振ると、ふりかえした。そして夜のカーブで見えなくなった。闇にすいこまれた。

前髪が触れあうくらいの距離

（オスのカジカガエルが）水の上を雌に求め寄ってゆく、それは人間の子供が母親を見つけて甘え泣きに泣きながら駆（か）け寄って行くときと少しも変ったことはない。「ギョ・ギョ・ギョ・ギョ」と鳴きながら泳いで行くのである。

絞って行くように、私の目から遠くに去ってしまう。

トラックの轟音が盛り上がる

地平線の近くで紫色にかすんでいる