舗装された道路は数十メートルごとになだらかに曲がっていて、細い川のようでもあった。

（夜更けの人通りのない道、腰に下げた鈴）生まれてからまだ一度も踏まなかった道。そして同時に、実に親しい思いを起こさせる道。――それはもう彼が限られた回数通り過ぎたことのあるいつもの道ではなかった。いつの頃から歩いているのか、喬（たかし）は自分がとことわの過ぎてゆく者であるのを今は感じた。 　そんな時朝鮮の鈴は、喬の心を顫（ふる）わせて鳴った。ある時は、喬の現身（うつせみ）は道の上に失われ鈴の音だけが町を過るかと思われた。

道が網目のように広がる

細い道が、あやふやな薄明りで、魚の腹のような色をして伸びている

野良猫や野良犬が、白いほこりっぽい道をかけていった。

産業道路としても利用されているこの道路は大型車が頻繁に通り、ディーゼルの黒煙や砂埃が絶えず舞っている。

夜になると街のアスファルトは鉛筆で光らせたように凍（い）てはじめた。

急いでいた。近道を、と思って普段めったに通らない裏通りの急な階段を駆け降りて行った。

表参道とぶつかる原宿の交差点に近づくと、

暗い星の冴えた小路