伸子は突然、何でもよい、楽器でも、力一杯掻き鳴らし、自分を溺らすこの寂しさを破りたい衝動を感じた。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:19% 作品を確認(青空文庫)
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寂しさによる体の反応、リアクション
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......ない一つの窓から、凍ったような外気越しに、若い女の頭や、白い上衣の肩がちらちら見えた。どの窓の中も平和で暖かくて、人に知られぬ幸福が舞い降りているように見えた。伸子は突然、何でもよい、楽器でも、力一杯掻き鳴らし、自分を溺らすこの寂しさを破りたい衝動を感じた。彼女は寝台のはしに腰かけ、靴の爪先で拍子をとりながら、鼻唄を歌い出した。これが自分の声だろうか? こんな惨めな、弱い震え声が? ぽつんと歌を切り、今度は雑誌をと......
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私は、まだこのひとと居たかった。このひとの持つ淋しさの層は、人類の歴史と同じくらい厚く、そこに吹く風は誰も振り向かなくなった墓石の上を渡って行くように寒々しかった。それでもそれが人間のもともと持っている淋しさによく似たエッセンスを持っているので、このひとと離れ難く、本当は淋しくて仕方ないのにないことにしてごまかした幾千もの夜の痛みが、一挙に吹き出してきた。そして、その洪水に押し流されないためには、このひとといるしかないように思えた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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