フェロモン指数が高い

ブラウスからのぞく首筋は眩しい。

左手を上げて――小指をやさしく折り曲げて――軟（やわ）らかい鬢（びん）の後（おく）れ毛（げ）をかき上げていた。これは葉子が人の注意をひこうとする時にはいつでもする姿態（しな）である。

身体にしなやかな肉の力が盛り上り、年頃近い本然の艶（いろ）めきが、坐（すわ）っているだけの物腰にも紛飾を透けて浸潤（うる）んでいる。

美人だし、ぼってりとした唇と、大きく濡れたように見える目は 淫らで官能的だ。だが、服を着た、歩く女性性器そのもの、といった印象がある反面、

たいして美形でもない顔を茶色のド派手な名古屋巻きの髪で誤魔化したような女

楊白花のように美しいひと

実在不可能とも形容すべき絶世の美少女

開き切った花のような中年の美しさ

サユリが客の間を腰から下だけを時計の振り子のように動かす美しい姿勢で歩いて行くと、彼らは店の内装の粋な感覚など全て忘れて彼女の方を見るのだった。時を刻むのは、彼女の靴の細い 踵かかと の音だけである。