愛撫(前戯)の表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
野呂にお尻の穴を舐められて、「自分はこんなに愛されている」とは思わず、それよりわたしは、「自分はこんなにこの男を愛している」と実感したのだ。それは全く、不思議な感覚だった。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
背面のすみずみまで揉みほぐしていく指が、ひとつの部分にだけは触れようともしない。その窪みのすぐそばを指が 掠めていくたびに十和子の息が止まる。何かのはずみにふと開かれて空気と視線にさらされるのを感じると、不随意な 収斂 が身体を駆け抜ける。陣治の視線になぜか欲望は含まれていなくて、十和子はもう何も考えず、どこまでも退行して小さな赤ん坊になっていくような気がする。 仰臥 の姿勢をとらされて、またいつ果てるとも知れないマッサージがはじまる。触れられない部分が触れられないために何倍にも肥厚し、肥大し、発熱し、発赤していく。そのままで目を閉じ、身体をまかせきっている。夢想のなかで、いつものようにいつのまにか、淫らな赤ん坊である十和子は父親に愛撫されている。無造作な、優しい、容赦ない父親の手。快感はまるで拷問のようだ。自分から知らない間に大きく脚を開いている。それでも触れてこようとしない。両脚の間にすわった父親は、下から両手を差し入れて持ち上げるように腰を揉む。十和子は父親の顔を知らない。ようやく腹にたどり着いた指先が、触診するように臓腑のかたちを探った後で、十和子はどこにも触れられず、じろじろと見つめられるだけでしばらく放っておかれる。それからいきなり二つの乳首の先端の何ミリかが摘み上げられる。声をあげる。父親がなぜそんなことをするのかわからない。十和子のほかの部分への興味を失って、見たこともない昆虫を捕らえたとでもいうような無邪気さでそれにかかりきりになる。二つの乳首は研究され分類され標本にされる。その後でようやく父親は、ふと思い出したようにもうひとつのものの研究にとりかかる。考え込みながらしげしげと眺める。すると父親が眺めている傷口から、十和子の身体がゆっくりと赤い内部をさらしながら裏返っていく。ほかのときにはありえない無様で滑らかな 蠕動 が胸、腹、腰を波打たせる。この瞬間のために自分が存在するのだと、この瞬間だけまた芯から思う。それから十和子はもうどこにもいなくなる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
その指は静かにミュウの乳房の曲線をなぞっていた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
徳子の体を餅をこね回すようにこね回したい
井上 友一郎 / ハイネの月「日本の文学 64 井上友一郎」に収録 amazon
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(女性のエクスタシー)闇の中で、からだに赤い筋が走ることがある。赤い筋は幅五センチほどで、 もも の内側の、からだのまんなかのあたりから両足の足首に向って、ゆっくりと走ってゆく。
向田邦子 / りんごの皮「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
己の袈裟に対する愛なるものも、実はこの欲望を美しくした、感傷的な心もちに過ぎなかった。
芥川龍之介 / 袈裟と盛遠
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