もう日が昇るのか、鏡の雪は冷たく燃えるような輝きを増して来た。

東（ひがし）の空（そら）が白（しろ）くもえ、ユラリユラリとゆれはじめました。おっかさんの木（き）はまるで死（し）んだようになってじっと立（た）っています。 　とつぜん光（ひかり）のたばが黄金（きん）の矢（や）のように一度（ど）にとんできました。子（こ）どもらはまるでとびあがるくらいかがやきました。

もろもろの陰は深い瑠璃色（るりいろ）に、もろもろの明るみはうっとりした琥珀色（こはくいろ）の二つに統制されて来ると、道路側の瓦（かわら）屋根の一角がたちまち灼熱（しゃくねつ）して、紫白（しはく）の光芒（こうぼう）を撥開（はっかい）し、そこから縒（よ）り出す閃光のテープを谷窪のそれを望むものものに投げかけた。

彼が眼醒（めざ）めたときは、耶馬台（やまと）の宮は、朝日を含んだ金色（こんじき）の霧の底に沈んでいた。

ちょうど山の向う側にまだ昇らぬ朝日があり、山の頂上線は異常に強い光を含んで、くっきりその傾斜を空の中に印していた。

夜になると光がなくなる。 　この街は、驚くほど従順に、夜に飲み込まれていく。街灯も住宅から漏れる光もまばらだ。田舎の夜と違って、動物や植物の強い息遣いがすることもない、清潔な暗闇が、街を覆う。 　私たちは白い世界と黒い世界を行ったり来たりしながら毎日を過ごしていた。

生温かい夜

日は一間半ばかりの辺に傾いて、僕等二人が立って居る茄子畑を正面に照り返して居る。あたり一体にシンとしてまた如何（いか）にもハッキリとした景色、吾等二人は真に画中の人である。

朝が近づいてくる気配が世界中を満たす。光が空の青に溶けて、かすかな輝きが空気の層を白く照らす。

月が氷のように冴え返った真夜半（まよなか）

畑の真中ほどに桐の樹が二本繁っている。葉が落ちかけて居るけれど、十月の熱を凌（しの）ぐには十分だ。

空は灰色に 拡がり、時々まぶたに重いくらいの薄陽が船にさします。

木漏れ日が鍋の湯気に虹を流す

空にはまだ厚い雨雲がかかっていたけれど、ひさしぶりに目にする神去山の黒い稜線は、なんだか心を落ち着かせてくれた。

ダイニングのテーブルの上に朝日が 射しているのが見える。