周囲の様々な音が、溢れたように耳に入ってくる

鈍い音が響いてくる

テレビの無意味な会話が耳の奥に引っ掛かって、わたしを苛立たせた。

そこいらから起こる人声や荷橇（にぞり）の雑音などがぴんぴんと君の頭を針のように刺激する。

砂嵐のような雑音

（三味線の音）風のように夢のように、かすかな律動でそよぎたつ糸の音

うつけた静けさの底を沢の音が滑っていく

（川べりの恋人の部屋に泊まる）いつも川音を聞いていた。先に先に流れて行くんだよ、と言っているみたいに聞こえた。大きく、揺るぎなく聞こえて、この恋に対していつも不安だった私を安心させる子守歌だった。

石炭ストーブがごうごうと音を立てる

聴いていないつもり、耳に入っていないつもりでも、思わず顔を上げる。和音人名のピアノはそういうピアノだ。ごく自然にたった一音弾いただけで、よろこびも悲しみも表現することができる。派手じゃなくて、静かで、でも粒子が細かいから胸にすっと沁みてくる。そこで消えずに、いつまでも胸に残る。そうして、胸の内側のどこかをコンコンとノックしてくるのだ。