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......できた。ない袖は振れない。その通りだ。子供は助けたくても、払うお金がない。どうしようもないことだ。俺は自分でどうにかしないといけない、と分かった。で、逃げた」　記憶の天袋の戸が次々と開いていく。ぱたん、ぱたん、と開いては閉じる。そこから覗く過去の場面は、埃を被ってはいるものの、一定の生々しさを備えていて、子供の頃の体験とは思えないほどの臨場感があった。犯人側の注意不足と七尾の運動能力と度胸、それから電車の踏み切りの閉まるタイミングとバスの到着時間に救われた。乗ったバスが発車した際の安堵と、乗車賃を持っていない......