火が燃え立つように、ちらりちらり白い波頭 が立っては消え、消えては立ちして、瞬間ごとに高さを増して行った。吹き荒れる風すらがそのためにさえぎりとめられて、船の周囲には気味の悪い静かさが満ち広がった。それを見るにつけても波の反対の側をひた押しに押す風の激しさ強さが思いやられた。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:43% 作品を確認(青空文庫)
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嵐の中の船
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前後の文章を含んだ引用
......顛覆からかばってくれた。しかし特別に大きな第四の紆濤を見た時、船中の人々は観念しなければならなかった。 雪のために薄くぼかされたまっ黒な大きな山、その頂からは、火が燃え立つように、ちらりちらり白い波頭 が立っては消え、消えては立ちして、瞬間ごとに高さを増して行った。吹き荒れる風すらがそのためにさえぎりとめられて、船の周囲には気味の悪い静かさが満ち広がった。それを見るにつけても波の反対の側をひた押しに押す風の激しさ強さが思いやられた。艫 を波のほうへ向ける事も得しないで、力なく漂う船の前まで来ると、波の山は、いきなり、獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背延びをした。と思うと、波頭は吹きつける......
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嵐の中の船の表現・描写・類語(水面・水中・水辺のカテゴリ)の一覧 ランダム5
「大暴風雨」のために、一たまりもなく操縦の自由をなくしてしまった。
小林多喜二 / 蟹工船
最初の 嵐 が襲ってきました。五月六日の夜のことです。強風がまず東南から吹きつけてきました。熟練した二十五人の水夫たちも 帆桁 をおろし 前檣 に小帆を揚げましたが、夜半には風波に舟を 委せるだけで、そのうち船の前方に裂け目が入り、浸水がはじまりました。ほとんど一晩の間、我々はこの裂け目に布をつめ、水を外にくみ出す作業を続けねばなりませんでした。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
船は、断末魔の鯨が、荒狂う波濤 の間に身体をのたうっている、そのままだった。
小林多喜二 / 蟹工船
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「水面・水中・水辺」カテゴリからランダム5
(凍った波)岸に近く、寄せた波がそのまま弓なりに凍っていた。
志賀 直哉 / プラトニック・ラヴ「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
たったいま地上に誕生したかのようにみずみずしくきらびやかに躍動する海
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
河が銀色の蛇のようにうねっている
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
永遠のありかたを静かに示しているように、波の音が単調に反覆を繰り返す
芝木 好子 / 女ひとり amazon
「乗り物」カテゴリからランダム5
船は時々子供がするように、身体を揺 った。
小林多喜二 / 蟹工船
トスカナ丘陵地帯のカーブの多い道をシフトアップとシフトダウンをリズミカルにくり返しながらやすやすと抜けていく
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
職工達と逃げたランチの間は 只一筋の白い水煙に消されてしまう。
林芙美子 / 新版 放浪記
「天災・荒れた天気」カテゴリからランダム5
「大暴風雨」のために、一たまりもなく操縦の自由をなくしてしまった。
小林多喜二 / 蟹工船
浪は浪を呑み、捲き、煽 り立て
太宰治 / 走れメロス
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