（喫煙可の店）天井にはかなり大型な空調機が設置してある

レンジフードのそばで煙草を吸っている。

火をつけると、この煙草特有の紙臭い臭いがたちこめ、それが炭火の臭気とまざって勝呂人名の胸をムカムカとさせた。

胸ポケットからぺちゃんこのパッケージをまた取り出し、最後に残った一本を抜いて少しためらい、結局口にはくわえず指先に挟んだまま、話しはじめる。

（羅宇）ちょうど他人に対するある憤懣の情から当てつけに自分の愛児をしたたかに打ち据える者のように羅宇を踏み潰した。

（革靴）なんだか毒箭（どくや）にあたって殪（たお）れた鰐（わに）のパックリあけた口のようにも大きく綻（ほころ）びて、その間から靴下が覗いています。

目鼻立ちどころか、性別さえ不明なほど小さく写っている集合写真

（薬が効く）おれは、歯を喰いしばって詰所を後にし、病室のベッドにもぐり込んだ。怒りが血流の中を異常な早さで巡回していた。このままこの病院を逃げ出してやろうか、という考えが一瞬浮かんだ。　数十秒後に、血流の中のアドレナリンを追いかけるように、ジアゼパム（さっき投薬した抗不安剤）が流入し始めた。それは、とろりとしたチーズのように、ささくれだった脳細胞にからみつき、荒廃した体中の荒れ地をやさしくほじくり返しはじめた。やがて、氷結して節くれだっていた全身が溶けてほぐれ始め、綿のごとく疲れた肉体だけがベッドの上をたゆたっていた。全身が柔毛のマユに包まれる感覚があって、やがておれはとろとろとした眠りの海を漂い始めた。

洗って干したばかりのコーラル・ブルーのしわひとつないシーツ

つまらなさそうに唇に挟んだタバコを上下に動かしている。