私たちの間をすり抜けて、バルコニーのほうへどんどん歩いていき、窓ガラスに映るバルコニーの 椰子 や向かいのビルや星空に、一瞬まみれたかと思うとかき消えた。

それは七八歳の子供位の大きさで、頭だけが大きく、胴から下がつぼんだように小さくなった、恐ろしいよりは 寧ろ滑稽な感じのする魔物だった。

逢魔が時の薄明かりに出て来る妖怪

ブルーのパジャマを着て、ぼんやりときれいな表情で。彼は、この世から遠い澄んだムードをたたえていた。 棺桶 のなかの真由を思い出させる顔だった。

このぼんやりと白い、明るい闇の中で息をひそめて、チャンネルの違う空間から 淋しく見ているのではないか

それは七八歳の子供位の大きさで、頭だけが大きく、胴から下がつぼんだように小さくなった、恐ろしいよりは 寧ろ滑稽な感じのする魔物だった。

地獄の絵を月夜に映したような怪しの姿

このぼんやりと白い、明るい闇の中で息をひそめて、チャンネルの違う空間から 淋しく見ているのではないか

希臘（ギリシア）の神話に出て来る半神半人の生（いき）ものなぞというものは、あれは思想だけではない、本当に在るものだ。現在でもこの世に生きているとも云える。現実に住み飽きてしまったり、現実の粗暴（そぼう）野卑（やひ）に愛憎（あいぞう）をつかしたり、あまりに精神の肌質（きめ）のこまかいため、現実から追い捲くられたりした生きものであって、死ぬには、まだ生命力があり過ぎる。さればといって、神や天上の人になるには稚気があって生活に未練を持つ。そういう生きものが、この世界のところどころに悠々と遊んでいるのではあるまいか。

たゞれたやうな赤い眼

一種の掏摸（すり）めいた手品

（天狗）山を自由に駆けめぐる。

一瞬大きな光が彼女を包み込んで、お姫様のような姿になる

あなた人がいいから霊にたかられてるのよ。

逢魔が時の薄明かりに出て来る妖怪