（花火職人）彼は、自分の心魂をつめこんだに等しい八寸玉の製作を終った。

玄人はだし

女が専門の料理人になれないのは、ここのところであって、毎日、神経を一点に集中し、昨日も今日も変りない美味さで料理をつくることが、実は、生理的・体質的に、女にはむりなのである。 　女の血は、現実にのぞんでたちまちに変り、うごく。 　家内なども、何かおもしろくないことがあって、むしゃくしゃしているときなどは、塩加減も何もあったものではない。 　今朝の味噌汁は昨日の味噌汁ではなく、昨日うまくたけた飯が今日はまずい。 　これが、男から見た女だ。

彼はプロフェッショナルであり、任務遂行のための最短距離を進む訓練を受けている。

（刀鍛冶も）テーン、テーン、テーン 　カアン、カアン 　と一つ槌の音が、必死にひびく。 　その槌音は、百のたましいだった。百のたましいは槌音だった。明けても暮れても、野末にそれが聞えぬ日はなかった。

何をさせても抜きんでている。

彼は単に才能に恵まれただけでなく、数ある才能の中でも、特に 良いもの に当たったのだった。

すごくむずかしいことを、なんでもないことのようにやってのける

素質に恵まれている

彼は、神様が戯れに折って投げた紙ひこうきみたいな才能ね。空の高いところに、ある時、突然現れて、そのまますーっと、まっすぐに飛び続けて、いつまで経っても落ちてこない。……その軌跡自体が美しい。

素質に恵まれている

剃刀のような神経を持った早熟の秀才

（若き天才ギタリスト）舞台上には、ギターという楽器の進化の系統樹の一番太い幹の先端があり、しかもそれが、弦と共に振動しながら、今にも目に見えて伸びてゆこうとしている。なかなかのハンサムで、背が高く、スター性も十分だった。

使い古した機械のような体

他人との違いが、嫌でも 優劣 として際立ってしまうような、真の才能に恵まれた人は、凡庸であることにこそ切実に憧れるものなのだ

ベンチは段ボールを布団がわりにした男たちに占拠されている

（刑事が）容疑者をいたぶる際に見せる、爬虫類的な嫌らしい感じ

（女性アイドル）かわいい顔に似合わないほど脚にはしっかりと筋肉がついている。

一つの事件を担当すると、捜査員は同じ土地に幾度となく足を運ぶことになる。

きょうもまず命は無事だったという底深い喜びがひとりでにわき出して来て、陸に対する不思議なノスタルジヤが感ぜられる。