梅花（うめ）が明るい。

梅の花が縮こまるほどの寒さ

（梅）青空に象嵌をしたような、堅く冷たい花を仰ぎながら

しいんとした午（ひる）さがりの弱い陽ざしのなかで、紅梅の花弁が鮮明

盛りを過ぎた梅の花が、雨に濡れて泣くように見える

梅の花が縮こまるほどの寒さ

とにかく、春の勢いはすごい。これまではモノクロにくすんでいた画面に、一瞬で色がつくみたいだ。どんな特撮技術を使っても、この鮮やかな景色の変化は表現できないだろう。 　変化は景色だけじゃなく、においにも音にも表れる。冬のあいだは硬く冷たく流れる川が、草木が芽吹きはじめるのとほぼ同時に、さらさらと優しい音に変わる。水は澄みわたって、甘い香りがする。金色に輝く川底の砂に、透明なメダカの群の影が映っているのを発見し、俺は思わず声を上げてしまった。 　なんかこう、春はすべてにメリハリがつくって感じだ。繁ばあちゃんの大群に包囲されてるのが冬だとしたら、百人の直紀さんがバイクに乗って、山を駆けめぐってるのが春だ。張りがあって騒々しい。

厚着の人と薄着の人が混在する季節

桜の花びらが雪のように舞い始める頃

動きの多い空の雲の隙間（すきま）から飴色（あめいろ）の春陽が、はだらはだらに射（さ）し下ろす。