白魚は一見、中華料理の羹のように、雑然として、かつ、トロトロしている。

舟に辛口の熱燗をつめた魔法瓶と辛子酢味噌のどんぶり鉢をのせて湖に繰りだし、少し膚寒い朝風のなかで、網からあげたてのピチピチ跳ねる白魚を茶漉しでしゃくってどんぶり鉢へあける。白魚は辛子酢味噌のなかでは跳ねない。ふれたとたんに一瞬でおとなしくなってしまう。透明な「一寸」の体に黒い眼をまじまじ瞠ったまま息絶える。それをつるつるとすするのだが、コリコリした歯あたりと、ほのかなホロ苦みであるきりで、生臭さも、肉らしい味も、何もなかったと記憶している。

二月初めの白魚には一緒に新海苔がくっ付いてくるが、これが何とも香りがよくていい風情

踊り食いはピチピチ跳ねて掴みづらい。口の中ではじけるような感じは、胸をドキドキさせてくれる。

シラウオの踊り食いは美味しいというよりも楽しい

十分に体にぬめりがある物を選ぶ。鮮度が下がると、ぬめりもなくなる。

口に含むとキモのこってりしたコク味と濃味が攻めてきて、次に特有のぬめり感と奥味が襲ってきて、七つ道具から溶け出してきた上品な旨みがそこに乗り、口中で快い複雑さを構成する

濃厚な味わいのオス、歯ざわりがよく淡白な味わいの子持ちメス。それぞれに持ち味があり、人によって好みは分かれる。

暑くなる時期、ウナギもいいがアナゴもいい

欧州では、チョウザメ料理がメニューに無ければ三ツ星レストランとして認められないほどの高級食材