光が庭のあちこちで弾けていた。

子供の爪の先きが人の肉体をこそこそと掻きおろしてくるようなきつい温かさを含んだ日光

柔らかく屈折する太陽光に照らされ物静かに浮き上がる

薄日の中を歩く

一月の太陽は、こんなところにも、霧のような美しい光芒（こうぼう）を散らしていた。

彼が眼醒（めざ）めたときは、耶馬台（やまと）の宮は、朝日を含んだ金色（こんじき）の霧の底に沈んでいた。

南側のガラス戸からさしこんだ陽が、座敷の半分まではいっていた。その位置に床がのべてあった。早春の明かるい陽に、床は清潔に輝いてみえた。

（庭のデッキ・チェアで目を閉じて思い出そうとする）猫の姿を頭に思い浮かべようとしたが、実際に僕が思い浮かべることができるのは、逆光を浴びた写真のようなひどく漠然とした猫の像にすぎなかった。強い太陽の光が瞼をとおり抜けて僕の暗闇を不安定に拡散させていたし、それに僕はどれだけ努力しても猫の姿を正確に思いだすことができなかったのだ。

真夏の海岸のように陽にさらされた窓辺

（窓に）流れ込むネオンの余光が、部屋の中を赤く青く交互に染めていく。