それまでの不安や焦躁はどこにか行ってしまって、悪夢から幸福な世界に目ざめたように幸福だった。

燃えるような充実感

（幸せな日々）桜が散ってしまった後も、街のあちらこちらで白や黄色の花が開き、軽く滑らかに流れる二人の会話は屈託のない笑いに守られて、第一そのどこにも、不幸を暗示する言葉や疑惑をさしはさむ隙間などなかった。

二人は笑った。幸せだと思い込めば思えるような気がした。

（幸福とは）道端にはしきりにそこいら中の人を呼びとめて「幸福とは何だと思いますか」と必死にたずねている人達がいた。《…略…》しかしそのおかげで、急ぐ私の心には一瞬、幸福を想う残像がすーっと桃色の尾をひいた。幸福をうたういくつかの名曲のメロディーも、次々と心に流れたような気がした。 　しかし、と私は思った。 　決して届かないふうなところに、もっと強く金色に光るイメージがあって、みんなが本当に欲しいのはそれなような気がする。希望とか、光とかを全部集めたよりももっと強烈なもの。 　それは、駅前で幸福についてたずねているとどんどん逃げていってしまい、お酒を飲みすぎるとぐんと近づいてきて、あたかも手に取れそうに思えるもの。

人生の幸福はやっぱり翼のある青い鳥じゃないでしょうか

その風景の中には、永遠に通じる力強さがあった。ぼんやりとそれを見ていると、本人には決して言わなかったが、幸福だった。

幸福感が十和子の全身を包み込む。

幸福が、水の油を落としたように一面に広がる

楽しげに微笑んでいた。最高に幸せ、これ以上満足することなんて、絶対にできっこないというみたいに。

顔一面に満悦らしい笑みが浮かぶ

「旅行か……いいなあ、行けるんだけどな。いつでも。」 　竜一郎はまるで生まれてはじめて知った甘い、美しい単語を口にするように、うっとりとそう言った。

長い髪をばっさり切って、石のように重い頭が馬鹿みたいに軽くなる

嬉しがらせる

気が遠くなるような喜びを感じる