それは無防備に増殖した、奇形の果実のようだった。表面には細かいささくれが広がり、ゆるやかな曲線模様が織り込まれていた。あまりにも大きくなりすぎ、自分でも形をまとめることができなくなって、あちこちがひび割れていた。 　そのひびの間から、はちみつがこぼれていた。血液のように濃く、静かに、ひたひたと流れていた。

蜜蜂は自分の机に辿りついたらしく、カタコト音をさせた

虎斑とらふ の大きな 肥った蜂

（晴れた）空は虻（あぶ）や蜂（はち）の光点が忙しく飛び交っている。

（蜜蜂の巣が）飾り玉のようにまん丸に蜜蜂が群れて止まっていた。

蟬が雨降りみたいに鳴きまくり

蟬が鳴きつづけていた。彼らは終りかけた季節を呼び戻すために、死にものぐるいで羽をこすりあわせていた。

朱ザヤのような照りのある、小がらの赤トンボ

ぬらつくミミズ

眼の大きな一疋の蠅だけは、薄暗い廐の隅の蜘蛛の網にひっかかると、後肢で網を跳ねつつ暫くぶらぶらと揺れていた。と、豆のようにぽたりと落ちた。